手作り外郎キットについて
(開発の経緯)
私は、店を継承した当初から、外郎はできたてで食べるのが一番おいしく、時間が1時間・2時間と経過していくにつれてその食感や風味が損なわれていくことを何とかできないか、という問題意識を持っておりました。
また、山口の外郎は、「わらび粉」が特徴と言われておりますが、わらび粉と称しているでん粉の多くは「さつまいもでん粉(甘藷でん粉)」であるという事実も知りました。事実、当店でも「さわらび」という商品名のでん粉を1年前まで外郎に使用しておりました。
私は、昨年の4月より「山口調理師専門学校」で和菓子の製菓理論を教えさせていただいていますが、教えるに当たって、それぞれの製菓材料について深く勉強いたしました。その中で、本物のわらび粉は非常に高価で、わらび餅などの原料のわらび餅粉は、「さつまいもでん粉」や「タピオカでん粉」で代用して、商品名は「わらび餅粉」などと称していることがわかりました。ということは、私の店で使ってきた「さわらび」というでん粉は「わらび粉」ではないのでは、と思い製造元に確かめました。すると、「さつまいもでん粉」であることが判明しました。そこで、すぐに「本わらび粉」を購入しようとしたのですが、それはあまりに高価で、外郎を作ってもとても販売はできないことがわかりました。そのため、「本わらび粉」が5%入り、後は「タピオカでん粉」と「蓮粉でん粉」で代用された「わらび粉並」というでん粉を使用することにしました。
「わらび粉並」に変えて外郎を作ってみると、今までの「さわらび」と「小麦粉」による外郎よりも、小麦粉が入らない方がもっちりとした弾力が得られ、またそれが持続することもわかりました。そこで、昨年夏より三隅勝栄堂では、この「わらび粉並」と小豆・砂糖だけで外郎を製造するようにいたしました。
しかし、これでは「本物のわらび粉の外郎です」とは言えません。そこで、でん粉として本わらび粉100%を使用した外郎が製造できないかと、昨年よりずっと実験を続けてきました。しかし、「本わらび粉100%」では、できたては最高のもっちりとした感じがでるのですが、時間が経過すればするほど硬くなり、さらには風味まで損なわれてしまいました。おそらく「本わらび粉」のでん粉は、他のでん粉に比べ老化が早いものと思われます。ですが、できたては、この「本わらび」に勝るものはないので、「なんとかできたてを食べていただくように商品化したい」という思いを持ってきました。
また、お客様から「安心・安全の食」が求められている時代です。お客様の中には高額でもいい物を手に入れたい、と思われる方もいらっしゃいます。その点からも「本わらび粉」100%の外郎を最高の状態で召し上がっていただくための努力をしたいと思ってきました。
その上、オーガニックにこだわった食材で、添加物を使わずに、自分で手作りの食事を作って食べたい、という欲求も高まっています。であれば、本わらび粉・和三盆糖など、日本で古来より用いられてきた材料をそのままお客様がご自分で手にされ、ご覧いただいて、そして自分でそれらを調合して作れるようにしたらどうか、と考えるようになりました。
そこで、購入されたお客様がご自宅で外郎を作れるように、また飲食に行った店でできたての外郎がご自分で作っていただけるように、と「手作り外郎キット」と手作りのお菓子を自分で作る「喫茶室ユニット」の開発を行いました。
(目的)
・外郎を自分で作ることができる
・外郎をできたての状態で召し上がれるようにする
・そうしたサービスが、飲食店でも受けることができる
(そもそも外郎とは)
外郎は、1368年(室町時代足利義満の頃)に陳崇敬(元(中国)の礼部員外郎の職)が日本に亡命し博多に居住し、陳外郎と称しました。その子孫の陳宋寄が京都に移り住み、西洞院で「透頂香外郎」という薬を売り出し、(1519〜1523)京都で外郎家と称し、薬業をなりわいとしたことから始まります。その後、戦国時代に外郎家が北条氏綱(小田原城に居城)に「透陳香外郎」を献上。北条氏が小田原に呼び寄せ、「外郎」という名称の薬として、小田原の名物になりました。しかし、ここで言う「外郎」は「薬」としての外郎でした。
蒸し菓子としての外郎は、秋津治郎作(周防山口の人)が大内氏の時代(室町時代)に「ういろ」式の蒸し菓子を考案(詳しい創製年は不明)という説もあります。(陳崇敬の子孫が京都に移り住み、京都で知人に「元の国の羮」を作ってご馳走していましたが、これが京都の駿河屋に伝わったという説もあります−こちらが一般的)
いずれにしても、室町時代後期には蒸し菓子としての外郎は登場しており、その製品の色が外郎に似ているので
「ういろう」と名付けたということです。外郎薬の苦みを和らげるために、薬の後に食す菓子として考案された
という説もあります。
製法;糯米一合半、葛五合に黒砂糖一斤半と水七合を加え、練り蒸す(『倭漢三才図会』(1713年出版)より正徳の頃の製法) この製法が名古屋に伝わり、名古屋の名産にもなりました。名古屋の外郎は、濃尾平野という雄大な平野を有する米所を背景に、上記の製法の通り、米粉を中心に製造されています。和菓子の業界で一般的に外郎とは、「米粉」などの「でん粉質」のものに砂糖と水を加えて、蒸したものを言うのです。上生菓子に外郎製のものがありますが、これも米粉や小麦粉と砂糖と水を加え、よく蒸してから上生菓子として様々な形に細工される和菓子です。 つまり、外郎とは、何らかのでん粉質の素材に砂糖と水を加えたものである。その点から考えると、山口の外郎が他の外郎と違う一番大きな点は、「餡」を使用することであります。この「餡」を入れるところが、名古屋にも、また上生菓子としての外郎にもない特徴なのです。 (開発に苦労した点) 「餡」を入れることで、山口の外郎独特の味が生まれています。ですから、手作りキットにした場合、当店の餡をどうやって保存ができるようにしてお客様にお渡しできるか、ということが一番の苦労でした。 保存料を入れれば、手作りキットにしてご家庭で安心して食べていただくものではなくなります。ですから、保存料などは絶対に使用せずに、なおかつ手作りキットなので、餡をある程度日持ちができるようにする必要がありました。また、そのための容器も手作りキットのイメージを壊さないものにする工夫が必要でした。そのため、竹にみえるようなプラスチックの容器に餡をぎっしり詰め、シールで密閉し、雑菌が繁殖しないように80度の高温で約1時間殺菌し、常温で1ヶ月日持ちがするように開発しました。 また、せっかく自分で作る外郎を、特に、飲食店で提供する場合、お客様が手を汚さなければならなかったら、お客様も嫌がられます。今までの外郎のスタイルは、板状の容器に生地を流し込み、それを切り分け、竹皮の紙で包むという形です。しかし、そのやり方だと、包丁が必要になりますし、手も汚れます。 そこで私は、「はじめから磁器製の容器に流し、それを蒸し、できあがったらそのままスプーンで食する」ということを考えました。このやり方によって、手を全く汚さずに、外郎を作って食べることができるようになりました。 (内容) ○手作り外郎キット;三隅勝栄堂・和カフェ風香にて10月18日より店頭・ネット販売 (本わらび粉100%の風味を楽しみたい方に) 手作り風香外郎・風(5人前・容器付き) 3,500円 原材料;本わらび粉・和三盆糖・北海小豆 一人分60cc 手作り風香外郎・風(5人前・容器なし) 2,500円 原材料;本わらび粉・和三盆糖・北海小豆 一人分60cc (外郎を作ってみたい、味も楽しみたい方に) 手作り風香外郎・月(5人前・容器付き) 2,700円 原材料;本わらび粉・タピオカ澱粉・蓮粉・和三盆糖・北海小豆 一人分60cc 手作り風香外郎・月(5人前・容器なし) 1,700円 原材料;本わらび粉・タピオカ澱粉・蓮粉・和三盆糖・北海小豆 一人分60cc (外郎を作ってみたい方に) 手作り風香外郎・花(5人前・容器付き) 2,500円 原材料;本わらび粉・タピオカ澱粉・蓮粉・上白糖・北海小豆 一人分60cc 手作り風香外郎・花(5人前・容器なし) 1,500円 原材料;本わらび粉・タピオカ澱粉・蓮粉・上白糖・北海小豆 一人分60cc ○カフェメニュー「手作り風香外郎」;和カフェ風香にて10月18日より提供 1人前 750円 原材料;本わらび粉・和三盆糖・北海小豆 一人分60cc ご自分のテーブルでそのままお作りいただいて、できたてをお召し上がりいただきます。 1.5人前 1000円 一人分90cc トッピング付き;きな粉・黒ごま・抹茶のセット 50円アップ



