VOL.43 秋の七草
Japanese Style
和のにゅーす・れたー Vol.43
発行日 2008.秋の七草
発行 三隅勝栄堂
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秋の七草
春の七草は七草を食べて無病息災を祝うとされていますが、秋の七草は眺めて楽しむものです。一千年以上も昔から私たちの心へ受け継がれてきた秋の七草。秋の七草を山上憶良は『万葉集』に次のように詠んでいます。
秋の野に咲きたる花を指(および)折り
かき数ふれば七種(ななくさ)の花
萩が花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花(おみなえし) また藤袴
朝貌(あさがお)の花 〜山上憶良『万葉集』〜
萩の花;万葉の時代、秋は「萩」と決まっていたようです。万葉集の中で萩の花を詠んだ歌は141種あるといわれています。古くから、新芽は萩茶に、葉は家畜のえさに、枝は屋根材や炭俵・ほうきに、花は染料、干した根は薬用に利用されていました。
尾花;尾花とはススキの花穂が出ている時の呼び名です。ススキは私たちの暮らしになくてはならない植物でした。茎葉は屋根材や家畜のえさに、根茎は解熱・利尿に用いられていました。お月見にススキを供えるのは、豊かな穂が実りの秋を連想させるので、豊作を祈願したものといわれています。
葛;山野のいたるところにはびこって他の植物を圧倒するほどの生命力です。昔からクズは生活に役立ち、根は葛粉として食用に、また葛根湯として薬用に用いられてきました。私は風邪を引いたときには葛根湯入りの風邪薬をよく飲んでいます。つるは編んで籠にします。近年は土壌保全植物として世界各地で砂漠緑化や堤防決壊防止に利用されています。
撫子;繊細なピンクの花です。和名は小さくて可憐な花を愛児になぞらえたもので、かつて「大和撫子」といえば日本女性の代名詞でした。つつましく控えめな女性をイメージしたようです。『万葉集』では26種詠まれています。
女郎花;秋風にゆらぐ優しい黄花のオミナエシ。『万葉集』では14種詠まれています。茎や根に特異な腐敗臭があるので、茶花としては好まれなかったようです。漢方では利尿・排膿に用いられました。
藤袴;『万葉集』では山上憶良の詠んだ1種だけです。『源氏物語』の藤袴の巻には夕霧が玉鬘(たまかずら)に贈る花として登場します。川原などの自生地を奪われ絶滅危惧種に指定されています。
桔梗;山上憶良が「朝貌(あさがお)」と詠んだ植物が何であるかは諸説があります。アサガオは熱帯アジア原産で、渡来したのは平安時代だということですから、万葉の時代はないはずです。今ではキキョウであることが定説になっています。
秋の七草とお月見
お月見とは旧暦の8月15日に月を鑑賞する行事で、この日の月は『中秋の名月』、『十五夜』、『芋名月』と呼ばれます。お月見の日には、お供えものをして月を眺めます。
中国や日本では月を愛でるという習慣が古くからあり、日本では縄文時代頃からあるといわれ、平安時代頃から中国より月見の祭事が伝わると、貴族などの間で宴が行われるようになりました。
日本では、そのお月見のお供え物として、団子・さといもなど丸いものや、すすき・秋の七草などを東に向けて供えてきました。中国では月餅を供えます。風流を好む日本人にとって秋の七草は、季節を感じる大切なもののひとつですね。
秋の七草のいわれ
秋の七草。どうして七種類なのかというと、西洋で‘7’はラッキーセブンと言われるように、縁起のよい数ですが、もともと日本では‘8’の方が末広がりということで喜ばれます。
ではなぜ?
それは当時大陸とは、遣唐使、また交易によって様々な交流が有り、多くの人々が中国の行事や風習に直接触れ、また唐の最先端の学問を学ぶことが出来ました。
そのなかで、「陰陽五行説」において‘七’は‘陽の数’で、さらに“聖数”と言われていて、この聖数は奇跡や神秘を表す七不思議、七福神から、禁忌の初七日、七難などと生活慣習に欠かせません。この、「陰陽五行説」とともに、“聖数7”も伝わって七種(ななくさ)を生みました。
また、仏教では七という数字をよく使い重要視してます。人が亡くなって中陰供養は七日ごとにして七回行います。七という数字は仏教で物事が成就する数とも云われます。
そして、生命の誕生にも七は大きく関係しています。人間は十ヶ月と十日で生まれてくると云われていますが、これは七日を四十回重ねた数です。ニワトリは二十一日でヒナになります。これは七日を三回重ねた数です。七面鳥は二十八日でヒナになります。これは七日を四回重ねた数です。月の自転が二十八日でやはり七を四回重ねた数で、こんなところにも何か不思議な秘密があると思います。一週間を七日として七曜を採用したのも何か興味深いものを感じずにはいられません。
ちなみに仏教では三は吉祥を意味したしあわせの数で、七は成就を意味します。二十一は三と七の乗数ということでさらに良いと云われます。お大師様が入定されたのも
三月二十一日ですが、偶然ではないような気がします。
万葉集は、七種の歌の前に‘七夕の歌’12首が記載して有ります。(この当時、秋は7・8・9月でこれらの歌は秋の雑歌としてまとめられている)この7月7日(七夕)と7種を憶良が結びつけ、“七種”の歌を詠い、より七種の存在を効果的に登場させました。なんだか、神秘を感じます。



